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くじを多用することで平等性を担保するきっかけをつくることができる

対話力に優れた中学生の学級活動の授業を参観しました

今日(2022/6/17)は,依頼を受けて,中学校の学級活動の授業を参観しました。

対話力に優れた子どもたち集団の学級でした。

対話ができるとは,子どもたち同士,対等の関係性であったり,相手に興味関心を持ったり,相手を尊重していたり,相互の変化を受け入れたり,とが必要になります。

その環境を構築していくのが,教員の役割です。


くじ引きで平等性を可視化する授業者

そのためには,平等と公平がバランス良く教室空間に存在することが必要になります。

このとき,「平等」を可視化するツールの一つとして機能するのが「くじ」です。


教師が,どのような方法で子どもたちを指名するか,ここに案外と,というか,多分に,教師の「あり方」が子どもたちに可視化されます。

例えば,意図的指名と称して,自分(教師)の組み立てる順序で指名をしていったとします。子どもたちは,「この先生は○○ちゃんを気に入っている」とか「この先生は,指名するときこのような流れで指名する(例えば,最初,答えが間違っている子を指名して,最後に,優秀な答え,または教師が答えてほしい答えを言ってくれる子を指名して,授業をつくっていく。そして,大概にして教師が言ってほしいと思っている答えを発表してくれるのはだいたい○○ちゃんであるなど)というのを意識,無意識に見ています。感じています。

もちろん,「今日は……○月○日だから,出席番号○ちゃん」みたいな,いい加減な指名をする場合もそこからいろいろと感じます。思いつきでこの先生は指名をして,なぜか,思いつきで指名されるときに,指名される回数が多いのはわだしだ!とかね(本当は自分が多くなくてもそう感じる子もいます)。


そこで,うまく使うのとよいのが「くじ」です。


いつも,役割をお願いするとき,指名するとき,基本的に「くじ」で決めるというようにしておくのです。もちろん,どうしてそうなるのかを説明しておくともっとよいでしょう。


子どもたちは,好き嫌いやできるできないで指名するのではなく,偶然性という平等で指名する先生なのだと見てくれます。

もちろん,他の言動も平等と連動するようにします。

たったこれだけで,子どもたちとの関係性が良好になる場合が多いです。


ちなみに「公平」とのバランスも大切です。

くじで指名されて,答えられないでいる子に助けてあげたり,発表が苦手な○さんが発表場面でくじで指名されたというときに学級全体や周囲が配慮してあげるようにするのです。これが公平性の担保につながります。


本日の授業では授業者がくじを多用していて気持ちよかった

本日の授業では,授業者が「くじ」を多用して,スムーズに心地よく進みました。


3人一組のグループで中心活動を勧めたのですが,くじで「ファシリテーター,記録,発表」と役割を分担していました。


授業最後に,何人か指名して全体に向けた発表をしてもらったのですが,くじでした。

後で確認したのですが,最初に指名したのは,実は学級の中で心配していた子でした。

しかし,(わたしの勝手な予想ですが)くじで指名して発表するということが普通になっている学級なので,その流れで,その子も最初に指名されて,たどたどしくではありますがきっちり,しっかり発表できました。

(こういうときは,授業後,授業者がその子に認め合いの一言をかけておくとよりよいですよね)

こういうとき,授業はドキュメンタリーだなぁと感じます。決して教師がストーリーを組み立てるものではないのです。答えを用意するものではないのです。

「学びやすい場」をいかに設定していくかなのだと思います。


わたしは現場にいた頃は「わりばしくじ」を多用

わたしは,現場にいた頃は「わりばしくじ」を多用していました。

過去に,上の文章とは異なる文脈で雑誌書籍等で紹介しています。

探してみたら,2003年5月号(No.214)の「授業づくりネットワーク」『だれも知らない「おもしろ教具」』(pp.8-11)の一つとして紹介しています(笑)。


この頃は明確に,何かに結びつけて考えていたわけではありませんが,学級生活を良好に進めていく一つの仕組みとして大切にしていました。

下のような文章で「わりばしくじ」を紹介しています。

(この文章の一番上の粗いわりばしくじの写真はこの原稿に用いた写真です。)



見たとおり年季が入っている。使用歴三年。子どもたちがトイレットペーパーの芯を用いて作ってくれた。わりばしの一方に子どもの人数分の数字が書いてある。これを様々な場面で使う。例えば授業の指名場面。無差別に指していることを子どもたちに示すためにもこれを使う。例えば当番を決める時の抽選。一番小さい数を引いた人が当たりなどと宣言してから使う。例えば席替え。黒板に座席図を描き、そこに無差別に番号を書く。あとは子どもたちにくじを引かせる。とにかく、様々な場面で使用できる。

もちろん,この「くじ」は末端の教育技術です。

これが大きく何かに影響をあたえるということはないでしょう。

しかし,「教師のあり方」とつながって考えたとき,「ああ,なるほど,だからくじなのか」と納得できると同時に,子どもたちにとってくじの心地よさがその教師のあり方にむすびつくということになることでしょう(例えば,くじを行う理由がおもしろいから,使命を考えるのが面倒だから……みたいな理由で行っていた場合,そういう「教師のあり方」が他の場面でも露出しますから,おなじ「くじ」を授業場面に取り入れたとしても,子どもたちには,言葉で説明できないにしても感覚的に全然違って見えるということです。)


『だれも知らない「おもしろ教具」』「授業づくりネットワーク2003年5月号(No.214)」,pp.8-11,2003,学事出版の原稿は下のような感じ。





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