上越教育大学に来て,本格的に研究等に取り組み始めた学級経営。
現場にいた頃は,意識せずとも働いている間は「学級経営」の渦の中に巻き込まれているわけです。ちゃんと立ち止まって学級経営を考えるなんてことはしないまま現場時代は過ぎ去っていきました。
立ち止まって学級経営を見つめ直していくと,数年前から,これからの「学級経営」は「ウェルビーイング」の方向性で進めていくべきだと考え始めます。
Facebook等,SNSで少しずつ,自分がウェルビーイングに興味を持っているということを発信し始めました。
そんなことを知ってか知らずか,昨年(令和5年)12月5日,日本学級経営学会開催の「第24回学級経営実践セミナー(愛知)」において,事務局の中心人物である佐橋慶彦さんから,「ウェルビーイングをテーマに学級経営実践セミナーを開催したい。その時,ぜひ阿部先生も来て話してほしい」と連絡を受けます。
声をかけていただいたのは,うれしいのですが,正直,困ったなぁと思いました。
なぜなら,「ウェルビーイングに興味がある」とつぶやいたものの,文字通り「興味がある」だけの段階で,ウェルビーイングに対して語るような内容も,提供する情報も持ち合わせていなかったからです。
ただ,いつものことながら,「お願いされた仕事は(できるだけ)断らない」を信条としている自分は,やるだけやってみようと思いお引き受けいたしました。
そして今回。赤坂真二先生からお声かけいただき,本書の執筆陣の一人に加えてもらいました。今回の内容は,この「第24回学級経営実践セミナー(愛知)」で話したことがベースになっております。
執筆者は,赤坂真二先生をはじめ,佐橋慶彦さん,松山康成さん,水流卓哉さん,深見太一さん,一尾茂疋さんと私。
章構成は,以下のようになっております。
第1章 なぜ,学級経営にウェルビーイングなのか 第2章 ウェルビーイングを高める,他者への関心とWE視点 第3章 幸せな人生のヒントは,共同体感覚の育成にあった 第4章 集団の意思疎通システムとしてのクラス会議 第5章 ウェルビーイングとポジティブ行動支援 第6章 ウェルビーイングと地域づくり 第7章 ウェルビーイングを高める教室の構造 第8章 対談(教室のウェルビーイングを守り育てる教師と学級の在り方)
各人が1章ごとを担当し,最後に執筆者全員での対談があるという流れです。誰が,どの章を担当しているかは,お楽しみにしていただくとして,自分のことを語りますと,私は第1章を担当しました。
私は書き出しなので,大きく3つのことを心がけて書いたつもりです。
1つは,ウェルビーイングそのものの整理です。
2章以後,各執筆者にウェルビーイングに関してご自分の実践されてきたことやご自分の考えをふんだんに書いてもらうためにも,ウェルビーイングが誕生したことから今までのこと,世界や日本での扱い,そして教育との関連などを整理しました。
2つは,ウェルビーイングと学級経営に関する関係性です。
ウェルビーイングと学級経営がいかにして結びくのか,どのように結びつくのか,周囲の情報を組み合わせながら整理しました。
3つは,わたしが学級経営との関連で最も力を入れているファシリテーションとウェルビーイングとのつながりです。
ここでは,講演講座で何度か,参加者にお見せしてきた「学びのモデル(=ファシリテーションモデル)<試案>」を初めて,書籍原稿に載せて説明を加えています。
「学びのモデル」を説明する時,テーマでないとき以外はあえて,ウェルビーイングを持ち出すことはあまりしていませんが,わたしの中では「学びのモデル」と教室でのウェルビーイングの実現と大きくつながっています。本書では,「OECDラーニング・コンパス2030」と関連付けて,このあたりを説明しています。
わたしの担当部分は,2章以降への助走なので,ぜひともその後の内容をお読みいただければと思います。
さて,私自身の学級経営とウェルビーイングの探求の旅はこれで終わりではなくて,始まったばかりです。今後,もうすこししっかりとした形でまとめると共に提案し,加えて,これらを研究に落とし込んでエビデンスを得ていきたいと考えています。
ウェルビーイングと学級経営に興味ある方,ぜひご連絡ください。
(ちなみに,その場合,情報をもらうための連絡ではなくて,協働で実践研究,研究実践するためのやりとりを望んでいます。)
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