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ファシリテーションが日常の先へ開いていくよう応援したい

14 時間前
読了時間: 6分

珍しくストレートに「ファシリテーション」という名前の講話,研修依頼

2026年10月7日、新潟県阿賀町立三川中学校にお邪魔してきました。全校生徒に向けたファシリテーション講座が50分、そのあとの職員研修が60分という一日でした。


私の興味関心や研究対象の一つに、ファシリテーションがあります。とはいえ、自治体や学校から研修を依頼されるときに、「ファシリテーション」という名称で直接声がかかることは、あまりありません。年に1回あるかどうか、数年に1回という感覚です。私の側の認知がまだ広がっていないのか、小学校・中学校の現場で、ファシリテーションを正面から研究しているところが少ないのか、どちらが理由かは、よくわかりません。ファシリテーションと聞いたときに、最初に私へ行き着くことは少ないのだろうな、というのが実感です。


そういう意味で、今回は久しぶりでした。ファシリテーションを研究し、生徒とともに考えている学校から、「ファシリテーション」という名称で依頼が来たのです。


授業ではなく、ゲストの時間として引き受けた

私は、飛び込み授業や示範授業という形で、子どもたちの前に立つことは基本的にしません。そこに意味や価値を見出しにくいからです。(自身の授業へのコンプレックスも多少あります)


では、なぜ今回は生徒の前に立ったのでしょうか。これは授業ではなく、ファシリテーションについての講話だったからです。ワークショップとまではいきませんでしたが、50分の中に活動を3つ入れました。学校がゲストティーチャーを招いて、話を聞いたり、体験したりする時間があります。あの位置づけです。


日常の授業の中に、ぽつんと外部の人間が置かれる形ではありません。イベントとしての異物です。そのほうが、私としてはすっきりします。その場にいる子どもたちや先生が、自分の日常へ刺激をつなげてもらえたら、いちばんうれしいです。そう思って引き受けました。


用意した「最初の一歩」より、先にいた

生徒の前では、どの程度まで日常的に取り組んでいるのかがわからなかったので、最初の一歩にあたる内容を用意していきました。


実際に会ってみると、日々やっているだけのことはありました。話し合い、対話、グループ活動を促すと、エンジンが一気に高回転まで上がります。少しの働きかけで、全体がすっと動き出すのです。単純に、すごいなと思いました。


このくらい動くのであれば、次の段階も用意して、そこから始めればよかったです。継続的に関わってきたわけではないので、そこは自分に甘くしておきます。


それでも、初めて会う外部の人間から、話し合いの裏側や仕組みを知ってもらうことには意味があると思っています。なんとなく先生に促されてやっていることも、自分の必要に応じてやっていることも、こういう形で成り立っているのだとわかると、これから使う武器やツールになります。


うまくいってよい結果になったときも、今日は話が盛り上がらなかったときも、仕組みが見えていると参考になります。「今日はあまりよくないから、よくするための動きをしてみよう」と、自分たちで調整できるはずです。うまく使ってほしいですし、あの日の生徒たちなら、話を聞いただけで活用できるのではないか、というワクワクがありました。


先生たちには、意味と、学校教育に入れるむずかしさを

職員研修は、子どもたちの活動を受けての60分でした。


子どもたちには、十分に渡せなかったことがあります。話し合い活動、とくに傾聴の意味や必要感です。先生たちには、そこを知ってもらいました。子どもたちがやったことを、先生たちも当たり前にできるようになってほしいと思いました。自分たちも体験し、子どもたちがあの集団の中でどんな感覚を持っていたのかを感じてもらうところから始めました。


ファシリテーションは、なんとなく一般的な言葉として使われています。そのものの意味と、学校教育に入れ込んでいく面白さ、そして矛盾やむずかしさを、先生たちに知ってもらいました。子どもたちとともに上手に使っていくコツも話しました。


最後は、私がよく使う学びのモデルに結びつけました。特別活動のような場面だけでなく、いつでも、どこでも、授業の中でも、ファシリテーションを意識してほしいということです。子どもたちの自律的な活動を促し、自立を応援する仕組みとして考えてもらえたらうれしい、と伝えました。


学校の一日の記録(三川中学校のホームページ)にはすでに私との記録が掲載されていて、生徒の時間はペアやグループの活動と、傾聴の心構えや技術が中心だった、とあります。授業のほか、学級活動や生徒会活動、行事の実行委員会にも生かしていきたい、という見通しも書かれていました。私のねらいとも重なる見方です。


いい感じのまま、内側で終わらせない

先生たちも、子どもたちにファシリテーションを渡しているだけあります。職員研修で私が活動を促すと、生徒と同じようにすぐエンジンがかかり、一気に進んでいきました。この学校は素晴らしいのだな、と素直に思いました。


同時に、自分たちで「素晴らしい」と感じて、ぬるま湯、つまりコンフォートゾーンだけで終わってほしくはありません。少し外側のチャレンジへ出て、いい感じに出していけたらいいです。学校の外へ出たとき、中学校から高等学校へ、もっと広い世界へ出たときに、役に立つものになるのではないかと思います。


今のいい感じを、1年後や、高校、その先の人生を考えたときに思い出せるといいです。先生たちと協力しながら進めていけば、もっともっといい感じになっていくと思いました。


ここでいうコンフォートゾーンは、慣れていて負荷の少ない領域のことです。その外側で少し背伸びする領域に、学びが起きやすい、という見方があります。今の三川中学校のファシリテーションは、すでに安心して回るところまで来ています。だからこそ、安心の内側だけで完結させる段階ではなく、少し外へ開く段階なのだと思います。


おわりに

もともと小学校が畑の私にとって、中学校には少し垣根があります。それでも、教室の空間に入ったときも、講話を進めているときも、終わったときも、気持ちのよいやりとりができました。現場がいいな、素敵だな、こういうところで働けたら幸せだろうな、と思いました。


その空間をつくっているのは、生徒たち自身であり、教職員の先生たちです。今でも十分だと思います。そのうえで、内向きではなく外へ抜けていくことで、よりよくなっていくのだと思います。持っているファシリテーションの心と技術を、これからも生かしていってほしいです。


生徒たちや先生たち以上に、私のほうがたくさん学ばせてもらいました。本当にありがとうございました。


参照・関連リンク

  • 阿賀町立三川中学校の一日の記録(2026年10月7日「ファシリテーション講座」):ホーム - 阿賀町立三川中学校

  • 学びのモデル(つかむ・活動する・ふり返る)は、阿部隆幸『ウェルビーイングな授業づくりのためのポジティブ心理学』などで述べています:書籍 | あべたか研究室

  • コンフォートゾーンと、その外側のストレッチゾーン(背伸びの領域)の整理:中原淳「快適空間、背伸び空間、混乱空間」:NAKAHARA-LAB.NET


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