2024年11月12日(火)。妙高市立新井南小学校で開催した「妙高型イエナプラン教育」研究会に全日,一般参加してきました。
大学教員になってから,こうした研究会に講師や来賓で招かれることはあっても,一般で参加する機会はずいぶん減っています。今回は,このような会があるということを知り,私の心のアンテナが「行った方が良い」と示してくれたのでした。
結果,大成功でした。
とてもとても素晴らしかったです。
もちろん,参加する会を選ぶべきとは思いますが,こうして自分の興味関心が重なる研究会にはどんどん自ら参加していこうと思いました。
(といっても,身近にそういう会があるかどうか……今後情報収集したいとは思います)
素晴らしいと感じた概要
順不同で,私の中にピピピと感じた内容を記録として簡潔に書き残しておきます。
しっかりと異学年(1〜3年,4〜6年)の自由進度学習でした。子どもたち一人ひとりが自分が今何をするのか,何をしたいのか迷うことなく進めていたことが印象的です。
活動の最中,もちろん自由に他者と関われるのですが,子どもたち同士の「声」がとても穏やかでした。しっとりしていました。私は過去に自由に協力協働できる学びのある授業を自ら進めたり,見学したりしてきましたが,学びに向き合えていない学級や子どもたちの場合,声が「キンキン」します。このしっとり感で,ここの学校の学びは本物だと感じました。
上の写真は学校の外観ですが,校内がめちゃくちゃすばらしい。もう,イエナプランを行うために建てられたような学校です。一緒に行っていた学生が,「教室のつくりが自由進度学習がしっとりとできるようにもともとつくられている感じですよね」と話していましたが,まさしくその通りと思います。
リソースを存分に活用していました。自立や自律に向けて,自身が考えられるリソース(友達,先生,インターネット,ICT,アナログノート,紙のワークシート,書籍……)を存分に使いこなしていました。いずれも自己選択,自己決定(事後の全体会で,研修主任は自己選択,自己調整と言っていたと思いますが)ができていました。
公立の小学校という環境で,全校生の「学ぶ姿」をこのようにできていることに敬意を表します。全体会でもちらっと垣間見られましたが,ここに来るまでに保護者たちの理解を得るために何度か会合を開いたり,教師たちの価値観,教育観のすり合わせを行ったりと大変なことがあったと思います。私は,現場にいる時に個人で勝手に『学び合い』などを展開していましたが,こうして学校規模で,自治体規模で推し進める時代になったのだと感じました。あとは,教師たち個人の意識改革に加えて,こうした特徴ある学校にしていくかどうかという自治体の覚悟,自治体のトップやリーダーの覚悟が試される時代になってきていると思います。
午後の全体会も興味深かったです。進行が外注でした。「みらいずworks」さんという新潟市の特定非営利活動法人にお願いしたようです。(皆さんご存じのように)私自身,ファシリテーションに興味がアリアリなので,進行の仕方を関心を持って見させてもらいました。うんうん,こんな感じ。いいねいいね。多くの時間を参加者にゆだねるわけですから,進行はあまり大きく出しゃばることはないのですが,やはりフレームという部分でそこにいる方々の学びの方向性をなんとなく決めていきます。おもしろいなあと思いました。今後,私自身,福島に帰って,教育イベントに特化したファシリテーションを請け負う仕事を立ち上げても面白いかも!って思いました。
全体会の一つに,「学び手中心」の学校や研究会がよく取り入れる「保護者」や「子どもたち」の生の声を取り入れるリレートークがありました。ここで詳しくは書きませんが,生の声はおもしろいです。もう少し時間を多く設けても良かったかもしれません。5人前後でグループを組んで,えんたくんを用いての対話の時間がありました。ここに保護者も参加しているところもありました。思い切って,子どもたちも参加してもらったらまた面白かったかもしれません。(ちなみに,えんたくん,阿部ゼミにも大量にあります。もう少し,効果的に使わないとなぁと思いました)
桑原昌之先生の価値付けの時間もありました。子どもたちに存分に寄り添うことを積み重ねてきたからこそ,チーム育成を進めてきたからこその説得力がありました。子どもたちの様子を見て,実際に関わっている先生や,保護者,子どもたちを見てからの桑原先生のお話はとてもとても腑に落ちました。一度お目にかかって,ご挨拶をしたいと思っていたので,帰り際にご挨拶させていただきました。今後,いろいろとご一緒しておもしろいことができたらうれしいですね。
いろいろと思ったこと,感じたこと
ほぼ全肯定な私ですが,頭の片隅で冷静に考えている自分もいました。メモとして今後の新井南小学校の教育研究の発展に期待して書いておきます。
よりたくさんの「教育観」の摩擦というかぶつかり合いが見られるだろうなと感じました。まず「授業とは何か」でぶつかり合い,このような教育を認められない人(先生,保護者,子供たち)がいるだろうなと感じます。わたしの中の答えは,シンプルで「教える」ではなく「学ぶ」なのだ,ということです。45分ないし50分を,教師がストーリーを考えてそこに子供を惹きつけて進めていくような「教える」授業はもういらないと思っている私です。だから,確実に異なる立場の方とはぶつかるだろうなぁ〜。
「学び」から見ると,横の広がりと縦の広がりを考えますね。自由進度学習でも時々目にする「深い学び」ができるのか問題です。この深い学びというのを自由進度というか,子供主体の学びにおいて,どのように考えていくか,追求するか,を考えていきたいですね。
私はもともと『学び合い』や「協同学習」畑の人でもあるので,どちらかというと協力協働に目が行きがちです。しかし,私の印象からするとイエナプラン教育は独立心の高いイメージのあるオランダで盛んということもあり,個別的な教育の方に軸足が向いているかなぁという思いがあります。大日向小学校に参観に行ったときそう感じましたけど,今回の参観でもより強く感じました。この個人と協働の関係性(もちろん,イエナプラン教育は対立しているわけでも独立しているわけでもないと思いますが)をもっとじっくり見てみたいです。
そういう意味で,個人に重心がありがちになるとした場合,子ども自身の判断に委ねることが多いイエナプラン教育では,協力協働の気持ちが育たないのではないかと危惧します。そこで大切になるのは,イエナプラン教育でいう「サークル対話」かなと考えます。ここに,いわゆる良好な関係性を育む「学級経営」の部分が関わるかなと思っているのですが,どうでしょうか。
最後に,新井南小学校の関係者が何度か口にしていた言葉に「イエナプラン教育を実現しようとしているのではない。地域の子どもたちの幸せを考えたとき,イエナプラン教育の考えや技術,仕組みを利用することで,子どもたちの幸せが実現できるのではないかと考えただけであり,イエナプラン教育の実現を目指すものではない(阿部の意訳)」と話していました。それが,研究会のタイトル「妙高型イエナプラン教育」というところにもつながるのでしょう。これは,なるほどと思いつつ,危険だなとも思っています。目的目標を明らかにして,従来のイエナプラン教育の方法とか型というものから自分たちの考えたものへ向かっていくのでしたらよりよいことでしょう。しかし,従来のイエナプラン教育の方法とか型というものに向かうことができないからこその妥協の産物として私達らしさの「妙高型」となったとしたら残念ですね。つまり,積極的な意味での「妙高型イエナプラン教育」なのか,消極的な意味での「妙高型イエナプラン教育」なのかということです。
最後の最後に,会場の何人かも同じ考えをしていたようですが,新井南小学校で取り組んでいる姿が「持続可能」なのかということです。公立学校の性として,そこに関わっていた先生たち,特に管理職,または自治体の方針が転換されることで簡単に今まで取り組んできた内容が終了するということはよく知られています。ただ,自治体が本気を出せば継続できるはずと思います。堀川小学校(富山),伊那小学校(長野)などは,公立小学校であるにもかかわらず,その伝統が延々と続いていますよね。それらは,そこに勤めることになった先生たちが伝統と文化を自身から取り入れること以上に,自治体の仕組みづくりがうまくいっているのではないでしょうか(ここはわたしの勝手な予想ですが)。
思わぬ出合い
いつもは,こうした研修会に参加しても,ずっと一人でぽつんと過ごしている私なのですが,どうしてそうしたのかわかりませんが,積極的に隣になった方に話しかけていました。
すると,ある自治体の教育長でした。
新井南小学校の実践をもとに,その自治体の取り組みのお話が聞けました。いやぁ,おもしろいおもしろい。どんどん世の中は変わっていきますし,変わろう変えようと思っている自治体は変わっていくのだと感じました。つながりができたので,今後なにかの折に関わることができたら嬉しいです。
また,そのお隣にも声をかけてみました。またまたある教育委員会の仕組みづくりに取り組もうとしている方でした。こちらは,「対話」の話で盛り上がりました。こちらでも,繋がりができたので,今後,何らかの動きができたらうれしいなぁと思います。
頭に残っていることを,しっかり書き残そうと思っていたら,思わず長文になってしまいました。
きっと,最後まで読んでくれる方は少ないだろうなぁ……苦笑。
めずらしい,興奮状態の私。
おもしろがってくださいませ。
とにかく,新井南小学校のチャレンジに拍手を送ります。
そして,今後の発展も楽しみです。
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