日本学級経営学会が後押しする「学級経営実践セミナー」。
「学級経営実践セミナーin新潟2024」。
初の新潟(長岡)での開催ということで,この「立ち上げる」というワクワク感,ドキドキ感を一緒に体験させてもらってきました。
初めての開催に,50名が参加とのこと。
集客としては大成功ではないでしょうか。
そして内容もよかったと私は感じます。
何かの通達を聞くわけでもなく,誰かの素晴らしい話を伺うということではなく,タイトル通り「学級経営」に焦点を当てて,「やりっぱなしの学級経営実践」ではなく「現場の方が記録を残して次に進める手応えのある学級経営実践」へという,「専門職」としての教師に導くプログラムになっていたのが素晴らしいと思います。
事務局の思いがこもったプログラム
まず,事務局の思いがこもったプログラムが印象的です。
単なる誰々の講演会という形ではなく,事務局がこのセミナーを企画構成しているということがよくわかります。環境設定,環境構成ですね。
加えて,事務局や話者からの一方的な情報提供ではなく,参加者にも当事者目線で主体的に参加してもらおうという意図も会場内で共有されていました。
セミナーを開く際,このようなところに力を入れて開催していこうとする姿,さすがです。
日本学級経営学会が想定する「学級経営実践セミナー」をちゃんと理解していただいていると感じました。
大村龍太郎先生の的を射たお話
基調提案,(鼎談を含めた)実践発表,参加者同士の話し合いを経ての最後の大村先生のお話は会場のみなさんに納得と安心をもたらせるさすがなお話でした。
まずは,「〜をしました」だけの実践発表から,「〜をしてみて,〜が明らかになりました。〜の効果を得ました」の実践研究へ取り組んでみよう,そして,それはそんなに難しいことではなく,楽しそうである,ということに気づいてもらえたのではないでしょうか。
学級経営研究は,人間を対象としている研究ですから,自然科学のような再現性を求める実証主義とは性質を異にするわけです。ある特定の状況や環境での様子を明らかにすることが大切であり,そこに価値があります。大村先生は「適用可能性」とおっしゃっていました。
そのためには,結果(明らかになったことや効果の詳細など)とともに,ある環境において適用するかどうか(つまり,読み手にとって「使えるかどうか」)を判断するための材料となるその時の状況や様子などをしっかり記述することが大切です。
参加者たちにセミナーのテーマの具体を提供してくれた実践者のお話
先にお話された2名の方の実践発表も今回の「学級経営の実践と研究をつなぐ」というセミナーのテーマを意識したよりよい発表だったと思います。
わたしは,お一人の甫仮直樹先生の発表後の鼎談に参加させてもらいました。
実質の鼎談時間がほぼ10分という中で,少し自分の意見を入れ込んでのお話をしてしまった分,発表者である甫仮先生,鼎談者のお一人である前田考司先生のお話に深く入りきれなかったという反省があります。
その中でも,私の中で「実践と研究」ということを意識したお話をしたつもりでした。
結果的に(私にとって都合の良い話を展開すれば),わたしがうまく言語化できなかったことを大村先生が全て会場全員にわかりやすく形を変えてお話してくださったことになります。
この時間,わたしがもぞもぞ語っていたことは,つまるところ大村先生のお話に帰着するわけです。
甫仮先生は,学級内の一人の子に着目し,具体性を伴った発表をされました。その間,参加者は身を乗り出して聞く姿が見られました。これが,良質な実践の力ですよね。ここにどんな分析方法を加えて,どんな分析と考察を加えていくか,研究途中ということで楽しみです。
方向性を示した上條正太郎先生の基調提案
事務局の話では,基調提案をされた上條正太郎先生の研究が今回のテーマ設定やセミナープログラムのもとになっているという話でした。
とても大切なお話でした。
同じことを語っていても,語る立場,背景,位置が違うと異なる表現になるように上條先生には研究を通しての明らかになったことと自らの主張があるために,これから学級経営を研究的視点で見ていこうとする方々にとって敷居が高く感じられたかもしれません。
でも,本日半日を通して,上條先生が話していたことはこのことかな……などと,じんわりと効いてくるお話だったのではないかと思います。
それは,それだけ本質をついている話だからです。
どんなに難しい話でも,その時よくわからない話でも,なぜかわからないけど頭の隅にこびりついて残っている……という経験があります(少なくとも私にはあります)。上條先生のお話はそれに近いかなと思いました。
量的研究と質的研究,etc……
私は今,質的研究に自分の興味関心が向いているという話をしましたが,それは,学級経営研究において量的研究が必要ないということではありません。
様々な研究が必要です。それらが影響し合って,関係し合って,物事を見ていくことができるからです。「私は今」ということを話しただけです。
量的研究と質的研究ということで言えば,「研究」という言葉の響きから実証主義が背景にある自然科学を「研究」だと思い込んでいる方からすると,量的研究が上で質的研究が下と考える方がいるようです。そうじゃなく,量的研究と質的研究は別物だと捉える必要があると思います。
それを踏まえて質的研究を進めていても,その判断を量的研究と同じように捉えてしまうことがありますね。質的研究を進める方も,それを読み取る方も,量的研究とは異なる文脈で取り扱うことができるように進められればと願う自分がいます。
懇親会も含め,またまた新たな出会いと語り合いがあり,とても実りある会でした。
次に繋がる素敵な会でした。
事務局の熱き思いが伝わってきました。
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