
何十年も前,毎月のようにお目にかかっていた上條晴夫さん(東北福祉大学)が次のようなことを語っていたことを思い出しました(正確な言葉ではありません)。
自分が必要と思う教育関係書には2つあって,一つはこれからの時代を引っ張っていくような本(ここ,ちょっと自信ないですけど),もう一つは定番モノと言われる本。例えば,アクティビティ集とか,運動会のアイデア集,みたいなものだね
この本は,まさしく後者,「定番モノ」であり,いつの世の中にも必要とされる本でしょう。
佐橋慶彦さんの目論見か,出版社が考えたのか,この表紙も,「あそび図鑑」といえば,こんな感じというイメージ通りの表紙ですね。懐かしいというか,私も2,30年前にこれと同じ本(存在しないわけですけど)を持っていたような気持ちになります(笑)。
ただし,「定番モノ」であっても,過去のものと同じものであるのなら,新しいものを出す必要はないわけですから,「定番」に今の時代をミックスしなければなりません。
ジーパンがジーンズに。ジーンズがデニムにという具合にですね(笑)。
まず,秀逸なのが,佐橋さんの著書を紹介しているときに毎回書いている感じのする,佐橋さん直筆のイラストです(笑)。この「ウマヘタ」な絵がなんとも言えません。
まるで,宝島(という雑誌知ってますか?)か,ビックリハウス(という雑誌知ってますか?)から飛び出してきたような感じ。味がありますよね〜。私から言わせると,昭和の感覚をもった令和のイラストでもいいましょうか。
このイラストだけを並べて,美術展をしてほしいくらいです。
もちろん,昭和と令和では大きく人の感覚が変わってますから(笑),いくら定番といっても「遊び図鑑」の内容はリニューアルされるべきで,その内容がしっかり今によりそっています。
「今によりそっている」というのは,具体的には「今の時代に寄り添っている」というのではなく「今の時代に生きる子どもたちの感覚に寄り添っている」ということです。
例えば,「アイスブレイクが実は苦手」(p95)というところがあります。協力協働が大切だ!として,すぐに「アイスブレイク」という感じで進めることがあります。これは「今の世の中に寄り添って」はいるかもしれませんが,「今の時代に生きる子どもたち」に寄り添っているかどうかは疑問なわけです。(私なんか,すぐにアイスブレイクをはじめちゃう,昭和な人間ですなぁ,……実は私も初対面の人と話すのがとても苦手な人間なのに)
このように,しっかりと「今」をキャッチして,新たにアウトプットし続ける佐橋さん。
また,このように64のあそびを紹介する途中途中に,それらの包括的な解説が入るのですが,佐伯胖さんや,近藤卓さん,河村茂雄さん,赤坂真二さん,白松賢さん……といった方々が整理整頓した数々の知見を引用したり,参照したりして結びつけています。
ただ単に,「これ,おもしろいでしょ」「こどもたち,盛り上がりますよ」ではないのです。
さすが,毎年毎年,日本学級経営学会で研究発表をし続ける方だけあります。
こりゃあ,続々と書籍を出し続けられるはずです。
すごいなぁ。
もう,リスペクトしか,言いようがありません。
この本も,そして,今後の佐橋先生の動向も楽しみです。
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