教育界 The新語【その12】

読書へのアニマシオン

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 5月13、14日。「国際読書シンポジウム」が東京国立博物館平成館にて開催されました。おろらく、このシンポジウムに参加した方々の最大の関心事は、スペインで生まれた読書教育メソッド「読書へのアニマシオン」の創始者モンセラ・サルト氏と会長マリア・ドローレス氏(シンポジウムで配付されたプログラムより)の話を聞けるということだったでしょう。
 「読書へのアニマシオン」とは、読書離れなどが叫ばれる昨今、「朝の10分間読書」などとともに、脚光を浴びつつある新しい読書教育の方法です。

■読書へのアニマシオンとは

「読書で遊ぼうアニマシオン」(モセラット・サルト著 佐藤美智代・青柳啓子訳 柏書房 1997)の中に、読書へのアニマシオンをC.オリバレス氏が定義した文章が以下のとおり紹介されています。
「本を読むうちに想像力によって立ち上がってくる登場人物や場面が、読み手の五感を聞き、グループで数々の出来事を共有しながら夢中で読んだ1回の読書体験が、他のあらゆる本に対しても読み手の心を襞(ひら)かせる、そんな本との出会い」
マリア氏は14日の講演で目標を3つに簡潔にまとめて紹介しています(メモの責任は阿部にあり)。それは
(1)子どもが読む力を高めること
(2)読書という新しい世界を発見させること
(3)消極的に読んでいた子どもが積極的に読めるように手助けをす ること
です。

■読書へのアニマシオンの中の「作戦」

作戦とは「読書へのアニマシオンの目標を達成するために用いる手段(マリア講演メモより)」です。作戦にはいろいろなねらいが仕組まれています。例えば「自発性を働きかけるようにする」「解釈する」「意見を形づける」「中心となる考えを導く」「記憶」「まとめる」「評価をする」「現実と嘘を理解する」……などの力をはぐくむ(マリア講演メモより)としています。
その後、マリア氏は作戦を通して効果的にねらいを達成するために、いくつかの条件を話されました。それは
・ふさわしい作戦とふさわしい本を選ぶ。
・学校行事と切り離す。
・時間をおいて繰り返す。
・子どもの自由意志で参加を任せること。
・あらかじめ本を読んでおくこと。
などです。
「読書で遊ぼうアニマシオン」では25の作戦が紹介されています。現在スペインでは75まで作戦が増えているということを聞きました。いずれその翻訳本も発行されることと思われます。

■作戦の例

 実際に「読書のアニマシオン」から「作戦」を2つほど紹介しましょう。短く紹介するので根底の部分で理解にズレが生じるかもしれません。ぜひ、書籍を手にとることをお薦めします。

(1)ダウトをさがせ(作戦1)

○ねらい
・声に出して読まれているお話を静かに聞く
・内容を正確に聞き取る
○進め方
・アニマドールは大きな声でゆっくりお話を読みます。
・お話がおもしろかったか、感想を聞きます。
・「さあ、2回目を読みますよ」と知らせて、「わたしがまちがえ て読んだら、大きな声で『ダウト』って教えてね」と言います。
・2回目は、名前や状況を何ヶ所か、1回目とは変えて読みます。 ちがいに気がついた子どもはその場で大きな声を出して知らせる のです。

(2)これ、だれのもの?(作戦2)

○ねらい
・物語を理解する
・登場人物を区別できる
・登場人物の特徴をつかまえる
○準備
・本(人数分用意し、前もって全員が読むように促す)
・画用紙(本の登場人物それぞれに関係ある服や持ち物の絵を、画 用紙1枚にひとつずつ描いておきます)
○進め方
・アニマドールはまず、本に出てきたいくつかのシーンを思い出す よう、あらすじをたどりながら、子どもたちと話しましょう。
・それから、1枚ずつ画用紙の絵を見せます。
・ひとりひとりに、その服や持ち主は誰かを質問します。正しく答 えられた子どもには1点をあげます。
・集計をすると、本を読んだ成果が具体的にわかります。

■作戦を進める上での3つの基本

マリア氏は講演の中で「作戦」をすすめる上で3つの基本がある(マリア講演メモより)と述べました。
その3つの基本とは「子ども」「本」「アニマドール」です。

(1)子どもについて

 マリア氏は「優れた教育システムは全て子どものことを考えているものだ」「子どもは一人ひとり異なっていることを理解しなければならない」といいます。

(2)本について

 マリア氏は「必ず子どものことを考え」てその子どもたちにとって「価値の高い本を与えるようにする」といいます。

(3)アニマドールについて

アニマドールの仕事は「子どもに合わせて目標を決め、必要な作戦を選び、プログラミングし、本を選ぶことです」と「読書で遊ぼうアニマシオン(本書ではアニメーターとして説明)」には書いてあります。
スペインには、アニマドールの研修プログラムが用意され実施されているだけではなく、アニマドールを養成する大学まであるということでした。それほど大切な役割であることがわかります。
アニマドールの役割は学校の教師の役割と重なるように見えます。しかし、本質的な部分で違うことをモンセ氏、マリア氏は強調していました。13日のモンセ氏の講演では「教授」と「引き出す」の違いを何度も話されていました。「教授」とは「教え授けること」であり、学校の教師はその部分の役割が強い。しかしアニマドールの役割は「(子どもの力を)引き出す」のだということです。

■日本での展開

岩辺泰吏氏を中心とした実践グループが日本の「読書へのアニマシオン」の実践をリードしています。それは、岩辺泰吏編著「ぼくらは物語探偵団−まなび・わくわく・アニマシオン−」(柏書房,1999)という書籍が発行されていること、朝日新聞、西日本新聞、アエラなどの各メディアに取り上げられていることからも明らかです。
ただし、岩辺氏らの実践は授業を中心としたものであり、モンセ氏らが主張している「学校行事の中で行わないこと(「モンセ氏講演メモ」阿部)」「強制という手段をとらないこと」等から逸脱しています。これらは、モンセ氏らの主張をもとにこれから「読書へのアニマシオン」に取り組もうとしている、特に教師の間では議論を呼ぶ部分でしょう。あくまでもモンセ氏らの言うとおりの正統派を学校の実践でも貫くか。それとも、日本の環境に合わせて、過去の日本人同様、柔軟に日本的なものへと吸収・発展させるのか。興味深いところです。

■読書へのアニマシオンの情報

最後に、読書へのアニマシオンの情報を書いておきます。
書籍では、次の3冊が参考になります。
・モセラット・サルト著 佐藤美智代・青柳啓子訳「読書で遊ぼうアニマシオン−本が好きになる25のゲーム−」柏書房,1997
・岩辺泰吏編著「ぼくらは物語探偵団−まなび・わくわく・アニマシオン−」(柏書房,1999)
・「子ども読書年 読書であそぶアニマシオン」『授業づくりネットワーク』(2000年5月号 No.174)学事出版(ちなみに書籍ではなく、教育雑誌です)

ビデオでは、次の2つがあります。
・「ビデオ 読書のアニマシオン(日本語字幕スーパーつき)」
柏書房
・「読書と学びの再構築〜読書アニマシオンってなぁに?〜」
(株)デコ企画

HPでは、次の3つが参考になります。
・学習ゲーム研究会 読書のアニマシオンに学ぼう
      http://member.nifty.ne.jp/m-age/txt/a-home.html
・読書のアニマシオンのホームページ
     http://www3.justnet.ne.jp/~wwaattaa/WELCOME3.HTM
・モンセラ・メソッドによる「読書のアニマシオン」を学ぶ会
 http://www.nier.go.jp/homepage/kyouka/kokugo/ANindex.html